シュレディンガーの猫について解説する前に
こんにちは。今回はシュレディンガーの猫のパラドックスについて、その解決方法について解説させていただきます。
まずはシュレディンガーの猫を理解するために、先に2重スリットの実験から解説させていただきます。
その後で、シュレディンガーの猫のパラドックスとは何かについて解説し、次にこのパラドックスについての既存の解決方法を解説致します。
そしてその後、私個人による解決方法を提示したいと思います。
2重スリットの実験
2重スリットの実験は、図のように電子銃と2重スリットがあり、スリットの向こう側にスクリーンを配置した状態で実施される量子の実験です。
ここで、電子銃から電子を発射させると、どちらか一方のスリットを通ってスクリーンに電子が到達するわけです。
さて、2重スリットの実験を開始させ、電子銃から電子を多数発射させます。すると、図のようにスリットを通った電子は、スクリーンに到達した後、干渉縞が出来ているのです。
この干渉縞は私たちの日常の常識では理解できない話ですね。摩訶不思議な話です。
これは、おかしい。普通はスクリーンに2つの山ができるはずなのに、干渉縞が出来るということは、電子は途中でどのような経路をたどっているのだろう?
ということで、電子の軌道を観測してみると、図のようにスリットを通った電子は、スクリーンに到達した後、2つの山が出来ているのです。干渉縞が消えています。
スクリーン上のこの電子の状態は、私たちの日常の常識では当たり前の話ですが、電子の軌道を観察したとたんに常識的なふるまいをすること自体、普通ではありえないことです。
ちなみに、電子を一つ一つ発射させてもこの実験は同じ結果が得られます。
この実験からわかったことは、電子は人が観測しているときは、粒子のように振る舞い、人が観測していないときは波のように振る舞うということなのです。
人が観測していないときに一つの電子を発射させたときは、1つしかない電子がまるで自分自身で干渉し合って、経路を決めているかのようです。
この実験は電子だけでなく光子でも同じ振る舞いをすることが知られています。なので、この実験は量子としてのふるまいとして認識されています。
ここで、量子力学でよく言われていることが、重ね合わせという概念です。
人が観測しているときは、量子の経路がどちらのスリットを通るかが確定されています。
しかし、人が観測していないときは、片方のスリットを通過するという経路と、もう片方のスリットを通過するという経路の2つの状態が重ね合わせの状態で存在するということです。
量子力学の分野ではそのように説明されています。
なので、人が量子のふるまいを観測している場合は、重ね合わせの状態が解消されていますが、観測していない場合は、重ね合わせの状態になるということになります。
観測とは、人がリアルタイムで見るということにこだわらず、量子のふるまいを記録するということと同じです。
この、観測とは量子のふるまいを記録するということと同じということは、後の説明を理解するために必要な知識ですので、しっかりと把握していただければと思います。
シュレディンガーの猫のパラドックスとは?
シュレディンガーの猫のパラドックスとは、1935年にオーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーによって提唱された量子力学についての説です。
もともとは量子力学を批判するために唱えられたものですが、その後量子力学の特徴を示すものとして、逆に次第に利用されるようになりました。
その量子力学の説とはこういうことです。まず、箱の中に「猫」と「毒ガスの入ったビン」と「放射性物質」そして「ガイガーカウンター」を入れておきます。そして、放射性物質が崩壊した場合、ガイガーカウンターがそれを検知して、毒ガスが出る仕組みとなっています。
ここで、1時間以内に50%の確立で、放射性物質が崩壊するものとします。
すると、箱を開けるまでは、猫が生きている状態と死んでいる状態が、同時に重なり合っているという主張が、このシュレディンガーの猫のお話しです。
先程の2重スリットの実験で、量子は観測するまでは重ね合わせの状態であるということを、猫の状態にまで発展させて例えているわけです。
人が箱を開けて観測するまでの間、箱の中では、猫が生きている状態と死んでいる状態の両方の世界が重なり合っているというお話が、このシュレディンガーの猫の主張したい内容です。
シュレディンガーの猫の解決方法 既存の説
ここで、シュレディンガーの猫のパラドックスの解決方法で、既存の説を2つ紹介致します。
シュレディンガーの猫のパラドックスの解決方法とはいっても、今からご紹介するものは一般的に賛否両論がありますので、物理学的に解決したと断定するものではありません。解決されたと主張されたものとして理解していただけましたら幸いです。
シュレディンガーの猫の解決方法 その1
さて、解決方法のひとつですが、検出器によって測定すると、その時点でマクロ的な古典物理学の系に属することになり、量子力学の系に属さないということです。
たとえば、2重スリットの実験で、フラーレンの分子までは干渉縞の観測に成功しています。しかし、同じことをサッカーボールで試しても、干渉縞など現れません。これは、サッカーボールがマクロ的な古典物理学の系に属するために、重ね合わせの原理に該当しないからです。
なので、古典物理学の系のマクロな毒ガス発生方法や猫の生死という現象自体で、どちらか一つの世界が選択されているのであり、決して2つの状態が重ね合わせの状態にあるわけではないという主張です。
シュレディンガーの猫の解決方法 その2
もう一つの解決方法ですが、量子デコヒーレンスと呼ばれるものによる解決方法です。
量子デコヒーレンスとは、量子力学において、重ね合わせの状態が外的要因によって破壊され、量子の情報が失われる現象のことです。たとえば、外部から熱揺らぎが作用したりすると、それによって重ね合わせの状態が失われます。
量子コンピュータがいまだ実現されていない理由の一つに、デコヒーレンスの発生によって量子ビットが失われて情報が維持できないという現象が存在します。なので、デコヒーレンスの発生は現実的に存在する現象です。
よって、熱揺らぎなどの外的作用があると量子デコヒーレンスが発生し、猫が生死のどちらか一つが選択されていることになるということです。猫自体が熱揺らぎを持っている点が、一つのポイントです。
なので、この実験では量子デコヒーレンスが作用し、猫が重ね合わせの状態ではありえないという主張です。
シュレディンガーの猫の解決方法 私個人の説
ここではシュレディンガーの猫の解決方法として、既存の説ではなく私個人の自説を紹介したいと思います。
先ほど、2重スリットの実験のときに、量子のふるまいを記録することは観測と同じであり、量子のふるまいを記録することで、重ね合わせの状態が解消されることを説明致しました。
そこで、この2重スリットの実験による現象をシュレディンガーの猫に当てはめた場合、量子を検出したか否かを猫の生死という形によって記録していると解釈をした場合どうでしょうか?
すなわち、 ガイガーカウンターを測定器とし、猫を1ビットのメモリとして解釈すると、どうでしょうか?
シュレディンガーの猫は量子を検出したか、しなかったかについて、その観測結果を1ビットのメモリで記録したことと同じになります。
メモリとは、1ビットであれば何も半導体でなくとも、猫の生死でも、コインの裏表でも何でも、2つの状態のどちらかを記録できるものはメモリになります。
シュレディンガーの猫は、ガイガーカウンターが量子を検出したら、1ビットの半導体に記録するのと同じことです。
なので、私個人の見解としましては、シュレディンガーの猫は、「猫という1ビットのメモリ」に量子のふるまいを記録する装置と同じですので、重ね合わせの状態は起きないと思っています。
ここで、「箱を開けるまで重ね合わせでない証明にならない」という反論がありそうですが、2重スリットのときに、量子のふるまいを記録した場合をよく思い出してみてください。
量子のふるまいがどちらのスリットを通るかを測定、あるいはビデオ等で記録した場合は、たとえ人間が見ていない箱の中であっても、重ね合わせは成立していないのです。
さらにわかりやすく言うと、2重スリットの実験で、電子が片方のスリットを通過した場合に猫が生きており、もう片方を通過した場合に毒ガスが出て猫が死ぬという装置を実装した場合を想定してみてください。
この場合、量子がどちらのスリットを通過するか、という量子の経路を、猫の生死という形で観測・記録しています。そのため、重ね合わせの状態ではない、と思われます。
そして、シュレディンガーの猫をさらに確実に決着させるために、2重スリットの実験で、片方のスリットを通ったときに1ビットのメモリに記録できるシステムを構築し、その状況で実験できれば、この問題は決着がつくと思っています。
そのため、物理学者、あるいは専門の研究機関の方にこの実験を提案させていただきたいと思います。
ぜひ2重スリットの実験で、量子のふるまいを一切映像として記録せずに、片方のスリットに量子の存在をとらえた場合、1ビットのメモリだけに記録するという実験を実施していただくことを希望しております。
1ビットのメモリの記録では決着がつかないと思われる方に対しては、この実験で片方のスリットで量子を検出したときに、猫のぬいぐるみを横転させる仕組みで、干渉縞が現れるかどうかを実験する方法でも良いと思います。
そうすれば、このシュレディンガーの猫のパラドックスに大きな前進となると思っています。
このようにして、粒子のふるまいを「猫の状態」として1ビットで観測・記録しているシュレディンガーの猫は、重ね合わせの状態が成立しない、これでシュレディンガーの猫のパラドックスは解決できているのではないかと私個人は思っています。
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